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NHK

ネット配信利用者にも受信料……NHKが開けた「パンドラの箱」? anchor.png

2017年7/15(土) 7:03配信

NHKが2019年からの実施を目指すテレビ番組のインターネット常時同時配信(ネット同時配信)を巡り、ネットでの利用者にも受信料を課す考えを公に表明した。
ネット同時配信にはもともと民放業界から異論が相次いでいたが、ここにきて「ネット利用者に受信料の網を拡大したい」というNHKの“本音”が露呈したことに加え、「ネット空間における公共性とは何か」という新たな論点も浮上。事は放送業界だけの問題ではなくなりつつある。
迷走するNHKのネット同時配信問題について解説する。

東京・渋谷のNHK放送センター

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◆唐突に飛び出した「本来業務」発言 anchor.png

 NHKによるネット同時配信については、総務省の二つの有識者会議――「放送を巡る諸課題に関する検討会」(諸課題検討会)と「放送コンテンツの製作・流通の促進等に関する検討委員会」で議論が進められている。

 昨年暮れに総務省がNHKの意を受けて放送法改正に乗り出す姿勢を示したことに対し、民放業界が「議論が進んでいない。拙速すぎる」と反発したため、現在は二つの有識者会議を舞台に総務省、NHK、民放が駆け引きを続けている状態だ(この経緯は、先に執筆した「NHKと民放、ネット同時配信めぐりバトル」で詳述)。

 ところが、ここにきて新たな論点が浮かび上がった。NHKがネット同時配信を行う際に、ネットでの利用者に受信料を課す考えを打ち出したのだ。

 NHKの坂本忠宣専務理事は7月4日に開かれた諸課題検討会の席上、次のように発言した。

 「同時配信の位置づけでいうと、(有識者会議の『受信料制度等検討委員会』から)受信料型を目指すことに一定の合理性があるという考えをいただいているので、将来的には本来業務ということを考えている」

 この発言の直接のきっかけとなったのは、NHKが設置した有識者会議「受信料制度等検討委員会」が6月末に出した答申案である。

 答申案は、

 ▼すでに放送受信契約を結んでいる世帯に対しては、追加負担を求めないことが適当。

 ▼それ以外の世帯費用負担の性質としては、「NHKの事業の維持運営のための特殊な負担金である受信料として費用負担を求める考え方(受信料型)」があり、「放送の常時同時配信は、NHKが放送の世界で果たしている公共性を、インターネットを通じて発揮するためのサービス」と考えられるので、「受信料型」を目指すことに一定の合理性がある。

 ▼しかし、受信料型は制度検討に時間がかかると予想され、当面の暫定措置の検討が必要。具体的には「有料対価型」負担のほか、一定期間は費用負担を求めない運用も考えられる。

 ▼「受信料型」の場合は、PC等を所持・設置しているだけでは費用負担は求めない。常時同時配信を利用するための何らかのアクション、もしくは手続きをとった場合に費用負担者とする「ゆるやかな認証」とすることが適当。

 といった内容で構成されている。

 個々の問題点は後で詳しく指摘するが、「受信料型を目指すことに一定の合理性がある」というお墨付きを得て、いよいよネットでの利用者に受信料を課そうというNHKの真の狙いが表に出てきたというわけだ。

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◆「大変な違和感」「議論ずれている」民放各社が反発 anchor.png

 一方、放送業界への影響はどうか。こちらについては少し説明を要する。

 NHKのインターネット事業は現在、「放送の補完業務」という位置づけとなっている。そのため使える資金にも制約があり、受信料の2.5%(約180億円=17年度予算ベース)の範囲内で行うよう枠をはめられている。

 ところが、放送と並ぶ業務(坂本専務理事が発言した「本来業務」、あるいは「必須業務」という)となると、受信料で賄う業務という位置づけとなるので、受信料収入を無尽蔵に使えるようになる。
もちろん、放送業務にも使うので100%ネット事業に回すわけではないだろうが、仮に25%使うとしても、年間1800億円の巨費をネット事業に注ぎ込むことが可能になる。

 そのインパクトは計り知れないものがある。
たとえば、サイバーエージェントとテレビ朝日が共同でスタートした「Abema(アベマ)TV」について、サイバーエージェントの藤田晋社長は開局1年にあたる4月、「1年で200億円の赤字を出した。
しかしあと1年、また同じペースで投資する」と発言している。
日本テレビが3年前に米国の運営会社から事業承継した「Hulu」(フールー)も、まだ一度も単年度で黒字経営になっていない。

 それでも、民放各社は「若者のテレビ離れが進行する中、ネット事業は避けて通れない」という判断の下、投資先行でネット事業に取り組んでいる。
そこに、潤沢な受信料に支えられ、1ケタ違う規模の資金を自在に使えるNHKが乗り込んでくる、というのだ。

 民放各社が「今までは補完的業務という位置づけだったが、放送と同等の本来業務と言い切ったことには大変な違和感を感じている」(TBSテレビの武田信二社長=7月5日の記者会見)、「放送法の枠外のサービスを(受信料で行う)本来業務と規定するのは議論がずれている」(フジ・メディア・ホールディングスの金光修専務=7月7日の記者会見)などと反発するのは、きわめて自然な反応と言えるだろう。

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◆総務省も「青天の霹靂」 anchor.png

 今回のNHKの対応は、総務省にとってもまったく想定外だったようだ。

 総務省は、NHKに地域制御(ローカルニュースはその地域でしか見られないように制限をかけること)を入れるように水面下で働きかけていた。
その際のキーワードが「ネットはあくまで放送の補完だから」というものだった。

 たとえば、さる5月12日、総務省の吉田眞人官房審議官(放送行政担当=当時)は、次世代メディア研究所のセミナーに出席した際、NHKに対して「放送補完の観点から地域制御をかけないことはあり得ない。
ローカルニュースをどこでも見られるようにするのは、放送の範囲を超え、補完の枠を超えてしまうからだ」とくぎを刺している。

 《NHKが常時同時配信に乗り出せば、対抗上、民放キー局も乗り出さざるを得なくなる。
そのとき、地方ローカル局とネットワークを結んで全国放送をしているキー局が全国でキー局の番組をネット配信したら、地方ローカル局は経営が成り立たなくなる。
民放もネット配信に乗り出しやすい環境をつくるには、NHKに地域制御を義務づけることが最低限必要だ》

 そんな発想から、総務省はNHKに地域制御の実施を強く求めていたのである。

 吉田氏はこのセミナーで、ネット配信をNHKが「本来業務」と位置づけた場合について、次のように発言している。

 「ネットだけで見る人に受信料として負担してもらうとすると、放送法の大改正になる。NHKの必須業務は放送であり、ネット配信はそうではない任意業務である。
受信料は必須業務を行うために徴収する。
だから、NHKがネット配信を必須業務とするなら、NHKは『日本放送通信協会』または『日本公共メディア協会』となる。
NHKの目的規定なども変更する必要があり、これは放送法の大改正になる」

 よもやNHKも、ネット配信を「放送の補完」の範囲内でスモールスタートさせなければ、民放が決してウンと言わないことはわかっているだろう……。
そんなNHKに対する牽制けんせいが垣間見える発言である。
それだけに、総務省にとって、NHKが「本来業務」と踏み込んだことは青天の霹靂へきれきだったに違いない。

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◆高市総務相の正論 anchor.png

 総務省を預かる高市早苗総務相は、今回のNHKの対応に非常に不満を抱いているとされる。
高市総務相はもともと「ガバナンス改革、受信料改革、常時同時配信を含む業務改革は、相互に密接不可分な問題だから『三位一体改革』として取り組む」と繰り返し公言してきた。
そのため、「常時同時配信だけ先に進めようとするNHKのことを快く思っていない」(総務相周辺)という。

 そうした背景もあってか、NHKの坂本専務理事が「本来業務」発言をした直後の7月7日の閣議後会見で、高市総務相はNHKの対応に疑義を表明した。

 「放送法の規律を、放送ではなく通信である常時同時配信にも適用したいという趣旨だとすれば、現行法上、通信と放送はまったく別概念で、それぞれ異なる規律が課せられているので、相当な議論が必要になる」

 高市総務相はこうも付け加えた。

 「ネットの公共性についても(NHKから)指摘があったが、ネット上で公益性ある情報を発信しているのはNHKだけではない。
意味するところが明確ではないし、法律上の位置づけもない」

 少なくとも昨年秋ごろまでは、NHKも総務省も「ネット上での放送コンテンツの常時同時配信を進めるべき」という方向性では一致していたはずだった。
だが、高市総務相の発言は、今やNHKの“暴走”にいかにブレーキをかけるかに必死になっているような印象すら抱く。

 ただ、NHK自身も「放送が太い幹であって、インターネット活用業務は放送を補完し、その効用・効果を高めるものだという考えに変わりはない」(上田良一会長=7月6日の記者会見)などと火消しに懸命になっているので、今後の展開はあまり予断を持たないほうがいいかもしれない。

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◆「上から目線」お墨付き手にネットに乗り込む anchor.png

 だが、筆者は二つの点で、「NHKは『パンドラの箱』を開けてしまったのではないか」と思わずにはいられない。

 一つ目の「パンドラの箱」は、ネット配信問題については、これまで「所詮しょせんはNHKと民放という放送業界の内輪もめに過ぎない」という見方が主流だったが、今回の「本来業務」発言を機に、ネット企業などの間で「ネットという自由な空間にNHKが本音むき出しで乗り込んできた」というネガティブな受け止め方が急速に拡大していることだ。

 あるネット企業の幹部は「NHKがネットからも料金が取れるとすると、あまりにも競争として不公平すぎる。
世論に訴える運動を展開しないといけない」と語る。

 これは高市総務相がいみじくも指摘している点だが、NHKが主張する「ネットにおける公共性」という論点は、「ネットの世界は自由」という考え方を基本信条とするネット企業やネットユーザーには「はなはだ危険な発想」(ネット企業幹部)と映るのだろう。

 「放送における公共性」なら理解できる。
電波という希少なものを扱っているからこそ、放送は免許事業なのであって、NHKに限らず民放各局にもさまざまな規制がかかっているのも、それが電波ゆえのことだ。NHKが国民から受信料を徴収できるのも、それが放送だからだ。

 他方、ネットの世界は基本的に自由空間だ。誰でも参入できるし、規制らしい規制もない(違法な動画が蔓延まんえんしているのも、有効な規制の仕組みを作れないからではあるが)。

にもかかわらず、NHKの受信料制度等検討委員会の答申案には、こんなくだりがある。

 「インターネットでは、一般に多様な主体による多様な情報発信が行われているが、必ずしも正確かどうか分からない情報も多く流通している。
インターネットサービスの特性上、自分に都合の良い情報だけを見るようになる傾向があること、あるいは事業者側が個人の嗜好しこうに沿ってレコメンド(推薦)することによって発生するいわゆる『フィルターバブル』という現象が起きうること等により、公共空間の維持が困難になってきているという指摘もある。
これまで公共放送として培ってきた蓄積を生かし、放送だけでなく、インターネットも活用し、これからの時代に人々が求める『公共的価値』に応えていく観点から、NHKの『豊かで、かつ、良い放送番組』が、放送だけでなくインターネットを通じても提供されることには大きな意義がある」

 このような、実に“上から目線”の発想のお墨付きを手にして、ネット空間に「公共性」を錦の御旗として乗り込もうとしているのだ。
しかも料金を徴収するという。これでは、ネット企業やネットユーザーが強く反発するのは当然だろう。

 総務省幹部は「NHKは安直すぎる。『放送をネットでも配信するだけだからいいでしょう』という程度の意識かもしれない。
非常にセンシティブな問題であるという自覚がなさすぎる」と憂える。まったく同感だ。

 事は放送業界だけの話ではなくなった――。そう感じるのは、決して筆者だけではないだろう。

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◆自ら示した「受信料制度の問題点」 anchor.png

 二つ目の「パンドラの箱」は、現行の受信料制度が内包する問題を顕在化させる引き金となるのではないか、という点だ。

 受信料制度等検討委員会の答申案は、PCやスマホ、タブレットで同時配信を利用する際、費用負担の対象について、
(1)端末を所持する者または設置した者、
(2)端末を所持・設置したうえで、利用するために何らかのアクションもしくは手続きをとり視聴可能な環境を作った者――の2パターンで検討したうえで、次のように結論づけている。

 「PCやスマホ、タブレット等はさまざまな用途を持つ汎用端末であり、これらの端末の現在の利用の態様等に照らして考えれば、そうした端末の所持・設置と常時同時配信の利用を直接結びつけることは、現状では理解を得られにくい」

 この判断から、(2)が「合理性がある」と指摘したうえで、「視聴可能な環境の設定」について、「たとえば常時同時配信を視聴しうるアプリケーションのダウンロードやIDの取得等が現時点では考えられる」と記している。

 また、認証の方法について「厳格性」と「簡便性」の両面から検討を加え、厳格すぎると「利用のハードルがあがって普及が進まず、公共放送の便益が広くいきわたらない」などと指摘し、「ゆるやかな認証」が適当と結論づけている。

 そのうえで、「この場合、認証とは異なるが、NHKの衛星放送ではCASメッセージの表示を活用していることも参考となりうる」と付言している。
有料放送等を見る際にテレビに差し込むB−CASカードの番号を連絡しないと、受信契約を申し込むよう促す黒に帯状のメッセージが画面を遮り、番組視聴をフルに楽しめない。その仕組みを「参考にせよ」と言っているわけだ。

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◆カーナビを持つだけで受信料契約 anchor.png

 ここまで答申案を詳しく紹介してきたが、見えてきたものは何か。
それはつまるところ、これら答申案の表現こそがまさに、現行の受信料制度の問題点を浮き彫りにしているという事実だ。

 現行制度の問題点の一例として、テレビを持っていなくても、ワンセグ機能付きのスマホや携帯電話、あるいはテレビが映るカーナビを持っているというだけで、NHKから受信契約を迫られている実情がある。

これを不服として、契約無効を裁判に訴えているケースさえある。

 これらワンセグ放送受信機能を持つスマホや携帯、あるいはワンセグ機能付きのカーナビを購入する人たちは、何もワンセグ放送を見たくてその機種を買ったわけではないケースが大半だろう。
答申案の表現になぞらえれば「スマホや携帯、カーナビ等はさまざまな用途を持つ汎用端末であり、端末の所持・設置とワンセグ放送の視聴を直接結びつけることは、現状では理解を得られにくい」のではないか、ということだ。

 認証の話も同様である。本来は厳格に本人確認すべきところを、利用者が減っては大変という理屈で「ゆるやかな認証」という“新概念”を持ち出した。
その認証方法として、B−CASカードの番号を連絡しないと視聴できない仕組みを挙げるなら、まさにワンセグ携帯やカーナビにこそ、その仕組みを真っ先に導入すればよいではないか。

 ワンセグ携帯やカーナビを巡ってトラブルが生じるのは、放送法64条の規定(「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」)に起因する。

 放送法が施行された1950年当時はラジオが受信料徴収の対象だった。
その後、テレビ放送が始まったが、テレビを普及させる一つの方便として「受信設備を設置した者」に受信料の支払い義務を課す規定には、一定の合理性があったと言えるかもしれない。

 しかし、2000年代に入ってBSやCSの放送が本格化し、今は「多チャンネル時代」だ。
近年は大画面でゲームを楽しむ人も増えてきた。
インターネット対応のテレビなら、アプリが起動するだけでユーチューブを大画面で見たり、Huluのような有料配信サービス、あるいはAbemaTVのような「ネット専用番組」を楽しんだりもできる。

 PCやスマホ、タブレットに限らず、テレビ自体が「さまざまな用途を持つ汎用端末」になってきている。
これも答申案になぞらえれば「利用の態様等に照らして考えれば、そうした端末の所持・設置とNHK番組の視聴を直接結びつけることは、現状では理解を得られにくい」と言えよう。

 しかも、その解決策も、答申案には書いてある。
地上波も、B−CASカードの番号を連絡しなければ受信契約を促すメッセージを出すようにすればよい。

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◆「本来業務」契機に浮上? NHKの思惑外れる議論に anchor.png

 今回の答申案は、「ネット利用者にも受信料の網を広げたい」という思惑が前面に出た内容であることは間違いない。

 背景にあるのは「技術の進展で、放送と通信の垣根がなくなるから」という発想だが、それは裏を返せば、放送のほうにも「利用者から徴収する」「ゆるやかな認証」をあてはめればよいという、ごく当たり前の議論を引き起こすきっかけとなるのではないだろうか。

 多チャンネルやネット全盛の時代にあって、「受信設備を設置」するだけでNHK受信料の支払い義務を課すこと自体が、もはや時代に合わなくなっている。

 NHKの思惑とはまったく別に、筆者は今回の「本来業務」発言が受信料制度そのものを大きく揺るがす契機となるような気がしてならない。


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Last-modified: 2017-11-01 (Wed) 20:10:55 (JST) (879d) by 123-YouSinnanji2
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